2004年09月28日

映画「大英雄」

 中国では、「三国志演戯」について、「一度読めば頭がよくなる。二度読めば頭がよくなりすぎる。三度読んだ人とは付き合わないほうがいい」という言葉があるそうだ。この映画「大英雄」を10数回見ている僕ら夫婦はどうすればよいのだろう。確かに友達は少ないが(笑)。

 当blogは副題として「自分の曲や、お勧めの音楽・芸能の話題などを。 」としている。けれど、今日紹介する映画は、手放しでどなたにでもお勧めできる、といったたぐいの作品ではない。

 我が家は僕も妻も、女王陛下が発行する「香港映画上級ライセンス」を取得しているが(ウソ)、ウカツにシロウトがこの映画を見たら、発狂するか廃人になってしまうかもしれない。5千人に3人くらいは、今まで知らなかった新しい楽しみを見つけられるかもしれないが、かといって、それで幸福になれるとは限らない。

 だけど、断言するけど、この映画は傑作だ。古田会長の応援歌レコーディングで知り合えた、サンタパパ様の記事に刺激を受け、思い切って書いてみる気になった。

 原題「射濶p雄傳之 東成西就」、93年作品。ジェフ・ラウ監督。

 ウォン・カーワイ監督が「楽園の瑕(東邪西毒)」をオールスターキャストをそろえて撮影していたが、役者のアドリブを重視するこの監督、撮影は遅々として進まない。せっかくこれだけのキャストが揃っているのだからと、プロデューサーをしていたジェフ・ラウさんが急遽脚本を書き上げ、8日間くらいで撮影した。香港映画、短期間撮影、というと、いかにも低予算でチャチくてハチャメチャな映画になりそうだが、そして実際その通りなのだが、これが、隅々まで計算が行き届き、見るたびに新しい発見があり、常に新鮮さを失わない作品に仕上がってしまったのだ。だから僕は、傑作だと断言する。ビデオやビデオCDで、我ら夫婦は10数回見たのだから、間違いない(そんな見方は、人にはお勧めできないが。体や頭を壊しそう)。

 物語の骨子は、「楽園の瑕」と同じ。中国の武侠小説家・金庸さんの「射濶p雄傳」「神闍侶」に登場する4人の英雄、東邪・西毒・南帝・北コツの若い頃を描く、というものだ。(「楽園の瑕」には南帝は登場しない)

 さて、一応、あらすじを述べる。映画はあらすじを読んだってわからない、まず実際見ないと、と思っているあなた。多分、見ればもっとわけ分からなくなるよ。ここから書くのは、恐らく今まで日本で文章にされた、一番整理されたあらすじだ。

 金輪国の重臣オウヤン・フォン(=西毒、トニー・レオン)が従妹(ヴェロニカ・イップ)と組んで謀反を起こした!

 金輪国の占い師(マギー・チャン)から飛行靴を奪い取ったオウヤンは、国王の印を持つ第三王女(ブリジット・リン)を追う。しかし飛行中に飛行靴が出火。オウヤンは墜落し、出火した靴は全真教徒で拳法の達人ワン(ケニーB)の頭に命中。彼は通りかかった第三王女に遺言と長衣を託して息を引き取る。第三王女を見かけた全真教徒の弟子・チョウ(=ホモ君、カリーナ・ラウ)は彼女を仇と誤解、やはり後を追いはじめる。

 武術の老師に救いを求めた第三王女は、弟弟子ヤオシ(=東邪、レスリー・チャン)とともに丹霞山へ拳法の秘伝を求めて旅立つ。ヤオシの幼なじみ(ジョイ・ウォン)も嫉妬して後を追う。

 彼女の従兄で許婚のホンチ(=北コツ、ジャッキー・チュン)、従妹に手ひどくフラれ、悲観のあまり自殺を図ってガケから飛び降り、オウヤンを巻き込んでしまう。二人の息詰まる対決!ホンチが圧勝するが、逃げるオウヤンにホンチは「俺を殺してくれ」としつこく迫り、逃がさない。結局二人で仲良く街に向う。

 一方、第三王女の許婚・タン親王(=南帝、レオン・カーファイ)は祖父の法王(レオン・カーファイ二役)の夢のお告げで、仙人になるために「胸に666の痣がある恋人」を求めて旅立つ。実はその恋人とは、第三王女に密かに想いを寄せ始めたヤオシであった。

 かくして、ホンチ→ホンチの従妹→ヤオシ→第三王女→タン親王→ヤオシという出口のない一方通行の愛が衝突。さらに第三王女を仇と狙うホモ君や、第三王女と結婚して王国を乗っ取ろうとするオウヤンの思惑が絡み合う。かくて、拳法の秘伝を手に入れて第三王女を誘拐したオウヤンと、占い師に率いられたその他の英雄たちは、金輪国王宮で激突するのであった。

 さてさて、主要な登場人物だけで8名、それも香港映画を代表する大スターぞろい。それぞれにきっちり見せ場を作り、個性を生かしながら盛り上げ、ラストは幸福感あふれる大団円。こう書くと、本当に傑作なようで、事実その通りなのだが、しかしそればかりなら、もっとメジャーな作品になっているだろう。

 この映画の最大の特徴は、なんと言っても、全編を彩る、脳みそが腐りそうになるギャグの数々だ。

 冒頭の王宮。謀反を起こしたオウヤンとその従妹、王を捕まえて国王の印のありかを白状させる。そのやり方というのが、でっかいムカデ(どうみてもオモチャ)を王に飲ませて(本当に飲むはずはない、そういう演技をするだけ)、小さなタイコを叩く。するとムカデが胃の中で暴れて苦しい。白状せざるを得なくなる....

 どうもこのタイコというのは、飲ませるムカデごとに専用のものがあるようだ。王を苦しめようとしてタイコを叩く。すると女官が苦しみだす。ああ、間違えた、こっちのタイコだ。今度は家来が苦しみだす。あ、こっちだ。3番目のタイコで、やっと王が苦しみだす。

 どうです? ここまでついて来られましたか? これくらいで投げ出しているようでは、到底、この後の目くるめくギャグの大海原を泳ぎきることはできません。(偉そうに書いているけど、ついてこられない人の方が偉いのかもしれない。だってその方がマトモだから)。ムカデのギャグは、この後、中盤で「三つ巴タイコたたき合戦」の場面や、ラスト近くで「ムカデの代わりにカニを使う」場面にエスカレートする。

 僕が大好きなのが「脈を取って殺す」ギャグ。中盤の見せ場・「オレを殺してくれ」と言いながら、異様に強いホンチと、オウヤンとの対決シーンに使われる。互いに相手の手首を握り、つまり「脈拍を測る」ポーズをするだけなのだが、それでお互い苦しみだす。どうも、このように脈をとると、相手を殺せるらしい(笑)。しまいには、2人とも泡を吹いて倒れる。

 だがこんなバカなギャグの前に、序盤、「第三王女がヤオシの脈を取って脅かす」シーンがあらかじめ挿入され、伏線が張られているのだ。なんという律義さ! 大好きだ。

 さて、これほどこの映画に心酔し、何度も見ている僕だが、今でも新しい発見がある。というか、最近ふと気がついたことなので、まだ確認はしていないのだが。

 中盤、タン親王が仙人になるために、ヤオシに薬を盛り、自分に「アイラブユー」を3回言わせるシーケンス。レオン・カーファイが女装して、レスリー・チャンを振り回しながら踊り狂う。映るたびにヘアスタイルが替わる。ものすげー怖い。それはいいのだが、このときレオンが歌う「竹のチカラがどーのこーの」、という歌。どうも、盆踊り会場からよく聞こえてくる「アラレちゃん音頭」のように思えるのだ(アレンジは全然違うのですよ)。このことに気がついてから、まだ映画を見直していないので、断言はできないのだが。ジェフ・ラウ監督は、多分、日本のアニメが大好きなはずなので、充分ありえる話だ。どなたか、もっとよくご存知の方がいらしたら、教えていただきたい。

 ラストは、大盛り上がりの末に大団円。幸福感あふれるエンディング。ここまで乗り切れば、あなたにも新しい世界が待っている。

 ああ、でもまだ語り足りない。そのうち、第二弾のレポートを書きそうな気がする。
posted by Honeywar at 02:06| ☔| Comment(0) | TrackBack(3) | 映像作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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