
シューベルトの作品に『未完成交響曲』と呼ばれているものがあります。交響曲は通常、四楽章構成とされることが多いのに、この作品の完成稿はなぜか二楽章まで。だけどとても美しいので大変な人気があります。
第三楽章の未完成稿は残されているので、これを土台にしてなんとか通常の四楽章ものを完成させようと、後世の人が試みたりもしていますが、あまり成功していない。そのため、一般には二楽章までの未完成版で楽しまれています。
今年のNHK大河ドラマ『八重の桜』も、『未完成交響曲』だったのではないか、と思い始めました。
30話ほどが作られて、なぜか途中で打ち切られた、幻の『未完成大河ドラマ』。しかしそこまでのデキがあまりにすばらしかったため、後世の人が残り20話ほどを継ぎ足した。でもいかんせん、継ぎ足された部分は作品の世界観そのものが変わってしまい、不自然で散漫な印象。
なら、未完成とはいえ、打ち切られる前の30話ほどを楽しむしかないのではないか。もしも完成版が作られていたら、前半の世界観そのままに、会津の人々の再起が、ハンサムウーマンたる八重さんの生涯が余さず描かれたら、どれほどすばらしい作品になったろう。それを想像して楽しむほかないのではないか。そう考えているのです。