....とりあえず、どこから突っ込んだらいいんだ?
7世紀日本の風俗や習慣、時代考証については、言いっこなし。わかるわけないんだから。まぁ中大兄皇子(なかのおおえのみこ)と鎌足が水を汲みにでっかいカメを持って、ズボンのままズブズブ川に浸かるのはどうかと思ったけど。生活感なさすぎるよ。衣服をなるべく濡らさないように、普通、工夫するだろう。いや、そんな細かいこと、どうでもいい。他にも細かい突っ込みどころはたくさんあるけれど、どうでもいい。
物語の骨子の話だけをしよう。
蘇我入鹿と中臣鎌足。幼なじみだそうだ。東国から出てきた素朴な田舎モノの鎌足を、何かにつけてかばってきたのが入鹿。鎌足のいいところといえば、木トンボ(木をけずって、竹トンボのようにして飛ばすもの)を作るのが上手いこと、それくらい。
鎌足は、聖徳太子を崇拝しているが、入鹿は、太子の子・山背大兄皇子(やましろのおおえのみこ)を滅ぼし、さらに、遣隋使だった南淵請安(みなみぶちのしょうあん)を処刑する。鎌足と同じく、聖徳太子や南淵請安を尊敬していた理想主義者・中大兄皇子は、鎌足とともに、入鹿を討ち倒す。
骨子としては、理想主義者の鎌足が、悪人・入鹿を成敗する、というわけだ。悪人だけど、入鹿は幼なじみ。幼なじみだけど、殺さなければならない哀しみ、を強調するツクリになっている。
哀しみを強調するあまり、入鹿のどこが悪かったのかが、イマイチわからない(苦笑)。
このドラマによれば、入鹿が山背大兄皇子を討ったのは、中大兄皇子の母・皇極帝の差し金だぞ。朝鮮出兵のために、摂津三島の農民を兵士に駆り出す場面があるけれど、実際に白村江の戦いに出兵するのは、中大兄皇子の治世だぞ。仏法を学んできたはずの南淵請安、「正義がないから唐は敗退する」だの、「正義がないから蘇我氏は滅びる」だの、仏法とは関係ない、妙な預言を触れ回っている(笑)。そりゃ、為政者としては、取り締まりたくもなるだろう(又笑)。
理想主義者で、素朴な田舎モノのはずの鎌足。だけど、蘇我石川麻呂などに根回しをしたり、暗躍もしているらしい。摂津三島の家から、飛鳥で暗躍するのか。現在なら近鉄などを使って日帰りできるだろうけど、距離的に無理はないのかな(僕はこのヘンの地理は疎いので、ちょっと判断できないです)。それに、蘇我氏の内部対立を煽っているわけだから、よっぽどのことがないと信用してもらえないだろう。つまり、よほどの交渉能力がないと。素朴な田舎モノの理想主義者にそんなことできるのか。いや、細かいことはどうでもいい(細かいのかな?)
故意か偶然かはわからないけれど、山背大兄皇子を直接ダマすのも、南淵請安を直接殺すのも、入鹿殺害に直接関わるのも、そしてその後の政治の中心に関わるのも、結局、鎌足じゃないか。「素朴な田舎モノの理想主義者」は無理がある。 全体としても、わけわかんないドラマになってしまったと思う。
役者さんは、渡部篤郎さん・木村佳乃さん・高島礼子さんと、それぞれ見せ場があったし、軽皇子(かるのみこ)の吹越満さんも印象的だった。大杉漣さんや中大兄皇子の小栗旬さんは、「みづら」がよく似合っていたな(笑)。かわいそうに、無理のある役を演じた岡田クンは、役者として、見せ場がなかったんじゃないかな。
結論として、風俗習慣、文物、村を再現したオープンセットも含めて、全ての努力が「受信料の無駄遣い」になった、と思う。