地上波に戻すと、薬師丸ひろ子さんの姿が。あ、そういえば、渡辺はま子さんのドラマをやるとか、聞いた覚えがあるな....

それはフジテレビの「戦場のメロディ〜108人の日本人兵士の命を救った奇跡の歌〜」。後半を観ることができた。
昔の歌に関しては、妻のほうが詳しい。渡辺はま子さんが歌った「あゝモンテンルパの夜は更けて」が、フィリピンに抑留されていた日本兵の帰還に一役買い、兵士たちに神のように感謝されていた、というエピソードは、妻から聞いたことがある。
番組は、まさにそのフィリピン抑留兵開放に関わる内容。が、番組後半からだけでも、妻も知らなかったエピソードが連続。
当時の写真・動画・録音、それに関係者の証言などを交えて、ドキュメンタリー+再現ドラマ、といった独特のつくり。すばらしいものだった。驚き・感動....そして、番組とは別の部分で、呆れた。
僕が観だした時点で昭和27年。つまり戦後既に7年も経過している。その時点でなお、フィリピンのモンテンルパ刑務所に、戦犯として死刑判決を受けた108名の元日本兵が収容されていた。
死刑囚だった代田銀太郎さん・伊東正康さんが作詞・作曲した「あゝモンテンルパの夜は更けて」を日本国内で歌唱しヒットさせた渡辺はま子さん。まだ国交がなく、反日感情も強いフィリピンに渡り、刑務所で慰問コンサート。そのときの録音テープを持ち帰り、国内で助命嘆願の世論を盛り上げる。
一方、「教誨師」つまり刑務所で受刑者の教化・死刑囚の精神救済をする立場の仏教僧侶・加賀尾秀忍さん。108名の元日本兵の解放に向けて、当時のフィリピン大統領に面会。反日感情も強い当時のフィリピンのこと。「泣き落とし」ならはねつけるつもりだった大統領。だが加賀尾教誨師は意表をつく戦術で、ついに、108名全員の日本帰還を実現する。
番組ではさらに、夫が戦死したと伝えられ再婚していた妻と、フィリピンで抑留されていた夫との、再会に関わるドラマも盛り込まれる。
僕は後半から観だしたので、「教誨師」加賀尾さんの立場がよくわからなかったのだが、後で番組HPを観てみたら、昭和24年に単身・命がけでフィリピンに渡り、囚人たちと共に独房で生活していたんですと。
また復員局のフィリピン担当・植木信吉さん。戦後7年も経ち、復員局も縮小。フィリピン担当は植木さん一人になっていたそうな。
ここからは個人的な感想。
渡辺はま子さんの歌が元日本兵解放に一役買った、とは聞いていたが、国交のない・しかも反日感情も強いフィリピンに渡り、これほど直接的な行動をとっていたとは驚き。
この役のために、1ヶ月歌のレッスンを受けたという薬師丸ひろ子さん。当時の女性歌手の発声の雰囲気をよく出している。当時のメロディーは、基本線はシンプルなのだが、微妙な「節回し」「コブシ」があるので歌いにくいはずなのだが、見事な歌唱だった。
演技もすさまじい迫力。夫が戦死したと伝えられ再婚していた妻を演じた中島朋子さんもすばらしかった。
収容者を前に、「戦中は戦意高揚の歌を歌い、兵士を送り出していた自責の念から、戦後、歌をやめようと思った。」と語る、渡辺はま子さん。が、戦争は国策。責任をとるべきなのは、一芸能人や、前線で闘っていた兵士ではあるまい。
戦後7年も経過した後、108名の元・兵士を救ったのが、民間の歌手・民間の仏教僧、というのは、感動的でもあるが、情けない話でもある。政府は何をやっていたんだ....?
関連記事:「戦場のメロディ 〜108人の日本人兵士の命を救った奇跡の歌〜」 Part2(giants-55様)
本当に良い作品でした。フジテレビというと申し訳無いのですが「安直に制作した番組が多い局」というイメージが在ったのですが(勿論「白線流し」等の名作も在るのですが。)、「遣れば出来るじゃん!」と感じさせられました。
他国でもそういう傾向は見られるものの、日本の場合は特に「組織防衛」が前面に出て、「個」の存在が蔑ろにされている感じがします。「それは、この時代から綿々と続いているのだなあ。」と感じました。
薬師丸ひろ子さん、昔は芝居が上手いという印象は無かったのですが、年月を経て味の在る女優になりましたね。
後半しか観ていませんが、いい作品でした。ドラマ+ドキュメンタリーというのも成功していましたね。
> 「個」の存在が蔑ろに
コメントにも書きましたが、NHKの「日本海軍400時間の証言」によると、海軍の復員省は水面下で裁判工作を行っていたとのことで。陸軍担当も含めて、別のことにかまけていて、ケアが末端に及んでいなかった可能性がありますね。
> 薬師丸ひろ子さん
すばらしい演技でしたね。キャリアが長いだけのことはあります。